基盤技術
癌細胞も、元来は自分の肉体を形成する組織の一員としてその生理機能を担っていた細胞です。しかし、癌化することによって、周囲の細胞や組織内の環境からの制御を受けることなく増殖し、周囲に浸潤したり転移したりして大きくなり、また全身に広がっていきます。癌が転移巣を形成するさいには、まず、癌細胞が血液やリンパ液の流れにのって原発巣から流出して遠方の臓器に到達します。その後、これらの転移した癌細胞は血管から這い出て周囲の正常細胞と相互に作用し合うことによって増殖を始めます。創業者である日下部博士は、このとき両細胞が相互に作用し合う環境として、細胞外マトリックスであるテネイシンが大変重要な役割を果たしていることを発見しました。さらに、癌細胞の周囲に存在する正常な線維芽細胞が癌の増殖を助ける因子を分泌していることを発見しましたが、この因子の産生・分泌においてもテネイシンが必要であることを発見しております。この両細胞間の相互作用は、様々な種類の癌細胞の発症初期や転移先での増殖過程に共通して必要な現象であるので、この相互作用の仕組み、つまりテネイシンや正常細胞の機能を標的として、これを抑制することを目指した治療法は多種の癌の増殖抑制に応用することが可能であると確信いたしました。